#13『マウイの釣り針』(神話伝説)から探るハワイアンの文化背景
前回↓の続きです。
『マウイの釣り針』からハワイアンの文化的な背景等を探っていきます。
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実は、『マウイの釣り針』だけでも地域により内容が違い、バリエーションに富んでいる。
ポリネシア圏の文化が口伝えだったからだろう。
それに、他の地域の島との距離がありすぎて頻繁に交易もできなかったのもあるのかな。例えば、ハワイ語でカヒキ。
「海外の地」という意味で、ハワイ以外の島々のことを言っていたようだ。ポリネシア圏の島々とは言え、海外だと思う程、遠い距離だということもうかがえる。
そんなかんなで、
その地域の中で時代や暮らしに合うように変化したりアレンジが加えられて話のバリエーションに富んだのだろう。
ところで。
『マウイの釣り針』にはハワイアンの文化的な背景や価値観が反映されている気がしたので、出てきたキーワードをいくつかピックアップして探ろうと思う。
【①マウイ】
ハワイの神話では、波と風を操り、動物に化けることもできる半神半人。母親思いで、人間思いの英雄。ハワイ諸島を魔法の釣り針(マナイアカラニ)で釣り上げたり、暑すぎたから空を高く持ち上げたり、太陽に掛け合って昼間の長さを変えたりした伝説を沢山持つ。
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新天地の開拓と土着には、自然との戦いで、計り知れない労力や忍耐が必要だ。
厳しい自然(神)と人々の暮らしを繋げたのがマウイ(半神半人)。
マウイは、神がかった特別な能力を他人を助けるために惜しみなく使う。優しく思いやりに溢れるその人柄は、正にアロハスピリットの持ち主だ。
天に輝く『マウイの釣り針』を見上げることで、
先人達(開拓者)への尊敬の意や自然に対する畏敬の念を思い起こしたり、ハワイアンの精神を分かりやすく後世にも語り継いだのかもしれない。
【②兄たちの人柄】
どんな昔話でも登場する利己的なキャラ。最後に天罰が下る辺りはお決まりの設定だ。
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アロハスピリットに分かりやすく欠けていてマナ(超自然のエネルギー的な特別な力)がない。
③おばあさん
古代ハワイでは一族が集まって暮らしていた。この中で、クプナ達(年長者)が一族を治め、ルールを作ったり、ホオポノポノで家族内の問題を解決したりと、重要なポジションを担っていたので権威があった。
④魚釣り
魚はハワイアンの日々の食生活において貴重なタンパク源のひとつ。魚によって漁の時期や禁止の時期が決まっていて掟を破ると厳しい罰を受けたといわれる。
⑤豚
マルケサス諸島辺りから、双胴カヌーで長距離大航海をしたときに、わざわざハワイへ持ち運んだ動物。他にも鶏や犬も乗せて運んだといわれる。豚は養殖されていたが、普段の食卓には上がらない。神様やカヌーを作るために切り倒したの木へお供えしたり、祝いの席で食される特別なものだった。ちなみに食べられるのは男性のみと掟があった。また、豚の半神は神の化身としても登場する。
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古代ハワイの文化においてとても重要な動物で、価値が高いものだったというのがわかる
⑥釣り針
古代ハワイでは、貝殻やクジラや動物の骨等で作っていた。生業の重要な道具。
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今では"幸運を釣り上げる"縁起の良いモチーフとしても人気。
⑦島
「大きな魚をみんなでお腹いっぱい食べた」という話でもよさそうなものだが、なぜ新しい島を釣り上げてハッピーエンドなのか?
「価値」⇒「大きな魚」<「新しい島」
高度な航海術を持ち太平洋の島々へ移動したポリネシアの民族にとって、新しい島(新天地)への憧れが強かったのか?
短期的な喜び(魚を食べる)よりも、後世に残る新たな土地(新しい島)の方が価値のあるものだったのかもしれない。
その日その時の暮らしは勿論大事だ。
ただ、島の資源は限りがあるから、一族が繁栄すれば、それを支えるだけの土地や資源の獲得先が必要になる。
新たな島で、より良い土地を開拓したら、多くの人が末永く暮らしを営んで行ける。
それに、人間思いのマウイの人柄と包括的な視点から考えても、「大きな魚」よりも「新たな島」の方が、
一瞬のパフォーマンスで終わらずに、永く人々の暮らしの幸せに繋がっていくのだろう。
そう思うと、
『マウイの釣り針』の神話の内容が、なんだか妙に納得できるな思った。
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さて、
日本(本州)だと、7月~8月の宵のころ、南の空低めのところで、"マウイ釣り針"の星々が輝いています。(注:ネオンが煌々としていると見えません)
晴れた夏の夜は、古のハワイアンも見上げただろう『マウイの釣り針』を探し、思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
ではでは。
またね~☆彡